【野菜・・ガルニチュール】
「付け合わせ」と呼ぶには、少しもったいない
ビストロにおけるガルニチュール。
日本語では「付け合わせ」と訳されますが、個人的には、この言葉では少し役割が小さく聞こえてしまう気がします。
例えば、ビーツ。
丸ごとホイルに包み、オーブンで約2時間かけてゆっくり火を入れる。
例えば、玉ねぎ。
片面をしっかり焼いて甘味と香ばしさを引き出し、ヴェルモットで香りを加えて、こちらもゆっくりローストする。
どちらも肉の横に添えられる食材です。
そこにかける時間はメイン料理とそれほど変わりません。
なぜ、そこまでするのか。
肉だけでは、一皿は完成しないからです。
特にジビエは、この考え方が大切だと思っています。
鹿、猪、熊などの野生肉には、それぞれ強い個性があります。
鹿の赤身には、ローストしたビーツの甘味と土を思わせる香り。
力強い猪や熊には、じっくり火を入れた玉ねぎの甘味や焦げ。
天然きのこ、根菜、発酵させたキャベツ、果実の酸味。
どれも「彩りが欲しいから」添えているわけではありません。
肉をひと口食べる。
次に野菜を食べる。
すると、もう一度肉が食べたくなる。
一皿の中に、この小さな往復をつくる。
それもガルニチュールの大切な仕事です。
そしてワインが加わると、さらに面白くなります。
肉とワインだけでは少し距離があったものが、ビーツの土の香りや、玉ねぎの焦げた甘味、ヴェルモットの香草的な香りが間に入ることで、すっと繋がることがあります。
ガルニチュールは、肉の脇役ではなく、
肉、ソース、そしてワインを繋ぐ存在でもある。
だからビストロでは、高価な食材をたくさん並べることより、一個の玉ねぎ、一個のビーツ、一株のキャベツに、どこまで手をかけられるかが面白い。
2時間かけたビーツが、何気なく肉の横に置かれている。でも、その2時間は見えません。
一緒に食べればちゃんと意味がある。
肉だけを主役にするのではなく、一皿すべてを料理する。
「付け合わせ」と呼ばれる小さな一品も美味しくしたい。
そんな見えない仕事の積み重ねも、ビストロ料理の楽しさだと思っています。